3rd party cookieはいつ廃止?撤回や延期はウソ?廃止の影響と代替を解説
3rd party cookieについての解説と、廃止後に取り組むべき代替施策についてお伝えいたします。プライバシー保護の強化と透明性の向上を目的に、その廃止が進められている3rd party cookieですが、本記事では、その仕組みなども詳しく紹介します。
▼この記事でわかること
3rd party cookieとは?
3rd party cookieの仕組みと廃止の理由
3rd party cookieの技術的な代替案
延期されましたが、Googleも廃止を明言している3rd party cookieの有用性と廃止の理由、そして、3rd party cookieに代わる代替技術について紹介いたします。
今後のデジタルマーケティングを攻略するためにも無視できないトピックとなります。3rd party cookieってたまに聞くけどなんのこと?と思っている人は、ぜひ最後までご覧ください。
3rd party cookieとは
3rd party cookie(サードパーティクッキー)とは、あなたが訪れているウェブサイト以外の外部のドメインから発行されるクッキーのことを指します。もう少しわかりやすく言うと、ウェブページを訪れた際に、そのページに埋め込まれている広告や解析ツールが自動的にあなたのブラウジング情報を追跡するために使用するデータです。
▶︎ 具体的な例で説明
例えば、ニュースサイトを訪れたとしましょう。そのニュースサイトには広告バナーが表示されていることがあります。この広告は、ニュースサイト自身が管理しているのではなく、広告ネットワーク(第三者)が管理しています。この広告ネットワークは、あなたがどのようなウェブページを訪れたのかなどの情報を収集するために、3rd party cookieを使用します。こうして収集された情報は、あなたの興味や関心に基づいて、パーソナライズされた広告を表示するために利用されます。
▶︎ 3rd party cookieポイント
- 追跡目的: 3rd party cookieは、ユーザーのオンライン行動を追跡して、個人の興味や行動に基づく広告を表示するために利用されます。
- プライバシーの懸念: これにより、ユーザーのプライバシーが侵害される可能性があるため、多くのブラウザや規制当局が3rd party cookieの使用を制限または禁止する方向に進んでいます。
▶︎ そもそもcookieとは
クッキー (cookie) とは、ウェブサイトを訪れた際に、あなたのコンピュータやスマートフォンに一時的に保存される小さなデータファイルのことです。クッキーは、あなたのブラウジング体験を便利で効率的にするために使われており、ウェブサイトとユーザーとのやり取りを記憶する役割を果たします。
Cookieの具体的な活用例としては、以下のものが挙げられます。
- ログイン情報の記録
- ショッピングカートの管理
- サイトの設定の保存
- ユーザーの行動追跡
▶︎ Cookieの種類
今回は3rd party cookieを取り上げていますが、その他にも1st party cookie(ファーストパーティークッキー)が存在します。詳しい説明は別の機会としますが、簡単にお伝えすると、訪問しているウェブサイト自体によって設定されるクッキーとなります。
▶︎ 3rd party cookieの仕組み
3rd party cookieは、前述の通り訪問しているウェブサイトとは異なる第三者(例えば、広告会社や分析ツールプロバイダー)によって設定されるクッキーのことを指すわけですが、ここでは、その仕組みについて簡単に紹介できればと思います。
3rdパーティクッキーの仕組みと利用例
- ウェブサイトの訪問:
あなたがあるウェブサイト(例: ニュースサイト)を訪れたとします。そのサイトには、広告バナーが表示されている場合があります。 - 広告やウィジェットの読み込み:
ニュースサイトが表示される際に、広告バナーが外部の広告ネットワークサーバーから読み込まれます。この広告バナーは、ニュースサイトとは別のドメインから提供されています。 - クッキーの設定:
広告バナーを表示する際、広告ネットワークは自社のドメイン(例: ads.example.com)からクッキーを設定します。このクッキーが「3rd party cookie」です。このクッキーには、広告ネットワークがユーザーのブラウザに対して一意のIDを割り当てるための情報が含まれています。 - ユーザーの行動追跡:
この3rdパーティクッキーを使って、広告ネットワークはユーザーが他のウェブサイトを訪れる際にも、その訪問データを収集することができます。つまり、ユーザーが複数のサイトを渡り歩くたびに、広告ネットワークはその行動を追跡し続けることができます。例えば、ニュースサイト、ショッピングサイト、ブログなど、どこにいても同じ広告ネットワークのバナー広告があれば、同じ3rd party cookieが使用されます。 - データの集約とターゲティング:
収集されたデータは広告ネットワークに送信され、ユーザーの興味や関心に基づいて広告のターゲティングが行われます。例えば、最近オンラインで靴を検索したユーザーに対して、関連する靴の広告が表示されるといった具合です。
3rd party cookieは、複数のウェブサイトにわたってユーザーの行動を追跡し、ターゲティング広告の配信やパーソナライズされたコンテンツの提供に役立っています。
3rd party cookie廃止の理由
ご存知の人も多いと思いますが、3rd party cookieは廃止が勧められています。その主な理由は、ユーザーのプライバシー保護の強化と透明性の向上となるのですが、ここでは廃止の具体的な理由を解説いたします。
1. プライバシーの懸念
重ねての説明となりますが、3rd party cookieは、ユーザーのオンライン行動を追跡し、個人の興味や関心に基づいて広告を表示するために使用されます。しかし、これによりユーザーのプライバシーが侵害される可能性があるのです。特に、ユーザーが意識しないうちに広範囲にわたってデータが収集され、どの企業がどの情報を持っているかが分からなくなるため、プライバシーに対する不安が高まっています。
2. 規制の強化
欧州連合のGDPR(一般データ保護規則)やカリフォルニアのCCPA(カリフォルニア消費者プライバシー法)など、データ保護に関する規制が強化されています。これらの規制は、ユーザーの個人情報の保護を目的としており、3rdパーティクッキーの使用に対して厳しい制限を課しています。これにより、多くの企業がプライバシーに配慮したデータ収集の方法にシフトせざるを得なくなっています。
3. ユーザーの信頼と透明性の確保
インターネットユーザーは、自分のデータがどのように収集・利用されているのかについての関心が高まっています。3rd party cookieによる追跡は、ユーザーが気づかないうちに行われることが多く、透明性に欠けている点が危惧されているのです。
4. 技術の進化
新しい技術が登場し、3rd party cookieに代わる手段が開発されています。例えば、Googleの「Privacy Sandbox」や「Federated Learning of Cohorts (FLoC)」などは、個々のユーザーを特定することなく、ユーザーの興味に基づいた広告の提供を可能にします。これにより、プライバシーを保護しながら、ターゲティング広告の効果を維持することができます。
5. ウェブブラウザの対応
主要なウェブブラウザでは、すでに3rd party cookieをブロックしているものもあります。各社の取り組みは、このあと詳しく説明しますので、そちらをご確認ください。
▶︎ 廃止の理由を要約
3rd party cookieの廃止は、ユーザーのプライバシー保護の強化、法規制への対応、ユーザーの信頼と透明性の確保、技術の進化、そして主要ブラウザの対応という複数の要因によって進められています。これにより、デジタル広告やデータ収集のあり方が大きく変わり、よりプライバシーに配慮した新しい手法への移行が求められています。
3rd party cookie廃止はいつからなのか
3rd party cookieの廃止に関するスケジュールは、ブラウザごとに異なります。主要ブラウザのスケジュール感などを整理しましたので、確認してみましょう。
1. Google Chrome
- 廃止予定時期: Googleは当初、3rd party cookieのサポートを終了する予定でしたが、業界の準備期間を考慮してスケジュールを何度か延期しました。現在、Google Chromeは2024年後半までに3rd party cookieのサポートを段階的に廃止する計画を発表しています。
- 背景: Googleは、ユーザーのプライバシーを保護しつつ、広告エコシステムの健全性を維持するために、「Privacy Sandbox」プロジェクトを開発しています。このプロジェクトが安定するまでは、クッキー廃止のスケジュールを慎重に進める方針です。
2. Apple Safari
- 廃止状況: AppleのSafariは、すでに3rd party cookieをデフォルトでブロックしています。2020年3月のアップデート(Intelligent Tracking Prevention, ITP)により、3rd party cookieの完全なブロックを実施しました。
- 背景: Appleはプライバシー保護の観点から、早い段階で3rd party cookieの制限に取り組んでおり、ユーザーの追跡に対する強い制約を設けています。
3. Mozilla Firefox
- 廃止状況: Mozilla Firefoxも、2019年の「Enhanced Tracking Protection(ETP)」機能により、3rd party cookieをデフォルトでブロックする対応を行っています。
- 背景: Firefoxは、ユーザーのプライバシーを保護するために、広告トラッキング技術に対して積極的にブロック機能を強化しています。
4. Microsoft Edge
- 廃止状況: Microsoft Edgeは、追跡防止機能(Tracking Prevention)を導入し、3rd party cookieを含む追跡技術をブロックする設定を提供しています。ユーザーが「バランス」または「厳格」な設定を選択すると、3rd party cookieがブロックされます。
3rd party cookie廃止は撤回された?
ネットを見ていると、3rd party cookieの廃止が撤回されたかのような情報を散見することがありますが、これは大きな誤りです。前述の通り、Googleが延期を発表したのは事実ですが、だからと言って廃止が撤回されたわけではありません。おそらく、Googleの延期を撤回と勘違いされた人が多いのだと思われます。
3rd party cookie廃止の影響
3rd party cookieの廃止は、デジタルマーケティングや広告業界に大きな影響を与えます。以下に、主な影響とその具体例を挙げて説明します。
1. ターゲティング広告の精度低下
- 影響: 繰り返しとなりますが、3rd party cookieは、ユーザーのオンライン行動を追跡して、興味や関心に基づく広告を表示するための主要なツールです。廃止されると、これまでのように個別のユーザーに最適化された広告を表示することが難しくなります。
- 具体例: 例えば、靴をオンラインで検索したユーザーに対して、その後も別のサイトで靴の広告を表示する「リターゲティング広告」が難しくなります。
2. 広告効果の測定と分析の困難化
- 影響: 3rd party cookieは、広告のインプレッションやクリック率、コンバージョンなどの効果測定に使用されています。クッキーがないと、広告キャンペーンの効果を正確に追跡し、分析することが難しくなります。
- 具体例: 広告主が特定の広告キャンペーンがどれだけの売上をもたらしたかを確認するためのクロスサイトトラッキングが難しくなり、ROI(投資対効果)の正確な評価が困難になります。
3. デジタルマーケティング戦略の見直し
- 影響: 広告主やマーケターは、3rd party cookieに依存しない新しいマーケティング手法を開発しなければなりません。これには、ファーストパーティデータの活用や、よりコンテクスチュアルな広告戦略へのシフトが含まれます。
- 具体例: 企業は、顧客と直接的な関係を構築し、メールニュースレターや会員プログラムを通じてファーストパーティデータを収集・活用する方向に進むでしょう。
4. 広告収益の減少の可能性
- 影響: 3rd party cookieが廃止されると、ターゲティング広告の効果が低下するため、広告のパフォーマンスが下がり、広告主が支払う広告費用が減少する可能性があります。特に、収益の多くを広告に依存しているウェブサイトやプラットフォームにとっては大きな打撃です。
- 具体例: 小規模なオンラインメディアやブログが、広告収入の減少に直面する可能性があります。
5. ユーザーエクスペリエンスの変化
- 影響: 3rd party cookieによる追跡がなくなることで、ユーザーに表示される広告が必ずしも興味のあるものとは限らなくなり、関連性の低い広告が増える可能性があります。
- 具体例: ユーザーが頻繁に見る広告が、関心のない商品やサービスに関するものになり、広告のクリック率が低下するかもしれません。
6. プライバシー保護と信頼性の向上
- 影響: 3rd party cookieの廃止は、ユーザーのプライバシー保護の観点からは肯定的な影響があります。これにより、ユーザーは自身のデータがどのように使用されているかについてより多くのコントロールを持ち、企業に対する信頼が向上する可能性があります。
- 具体例: プライバシーを重視する消費者層に対して、企業が信頼を得やすくなる一方、透明性の高いデータ収集と利用の方針が求められます。
▶︎ 廃止の影響まとめ
3rd party cookieの廃止は、広告業界全体にとって大きな転換点です。ターゲティング広告の精度低下や広告効果測定の困難化など、さまざまな課題が予想されますが、同時にプライバシー保護の強化と新しいマーケティング手法の開発という新たな機会も生まれます。企業は、これらの変化に対応するために、データ戦略を見直し、ユーザーとの信頼関係を築くための新しいアプローチを模索する必要があります。
と言うことで、次よりその技術的なアプローチを見ていきましょう。
3rd party cookie廃止に伴う代替技術
3rd party cookieの廃止に伴い、プライバシーを保護しながらも効果的な広告やデータ収集を実現するための代替技術が注目されています。以下は、3rd party cookieの代替として提案されている主な技術やアプローチです。
1. Privacy Sandbox(プライバシーサンドボックス)
- 概要: Googleが提案している一連の技術群で、ユーザーのプライバシーを保護しながら広告のパーソナライズや効果測定を行うことを目的としています。
- 主な技術:some text
- Topics API: 個々のユーザーを追跡するのではなく、ブラウザがユーザーの最近の興味(例: スポーツ、旅行、音楽)を把握し、その情報を広告に活用する。ユーザーの興味に基づいて関連する広告を表示することが可能になります。
- FLEDGE: 広告のリターゲティングをプライバシーに配慮して実施するための技術。広告主が過去に訪問したユーザーに再度広告を表示するためのデータを、ブラウザ内で安全に管理する仕組み。
- Attribution Reporting API: 広告クリック後のコンバージョン(購入やサインアップなど)をプライバシー保護しながら追跡し、効果測定するための方法。
2. ファーストパーティデータの活用
- 概要: 企業が自社で収集するデータ(例: ウェブサイトの訪問履歴、顧客の購入履歴、会員登録情報など)を活用する方法です。
- 利点: 直接顧客から得られるデータであるため、プライバシーの観点から信頼性が高い。顧客の許可を得てデータを収集し、パーソナライズされた体験を提供することができます。
- 活用方法: 顧客データプラットフォーム(CDP)を導入し、ファーストパーティデータを集約・分析してマーケティング活動に活用する。
3. コンテクスチュアルターゲティング
- 概要: ユーザーの過去の行動に基づくのではなく、現在表示されているページの内容に基づいて広告を表示する方法です。
- 例: スポーツのニュース記事が表示されている場合、そのページにスポーツ用品の広告を表示する。
- 利点: 3rdパーティクッキーを使用せずに関連性の高い広告を表示できるため、プライバシーを尊重しながら広告効果を維持できます。
4. ユーザー同意管理プラットフォーム(CMP)
- 概要: ユーザーからの明示的な同意を得てデータを収集・使用するためのプラットフォーム。クッキー使用に関する通知や、ユーザーのプライバシー設定を管理する機能を提供します。
- 利点: ユーザーの同意に基づくデータ収集を行うことで、透明性を確保し、規制に準拠した運用が可能となります。
5. サーバーサイドトラッキング
- 概要: データ収集をクライアントサイド(ユーザーのブラウザ)ではなく、サーバーサイドで行う方法。これにより、データがより安全に管理され、ブラウザの制限を回避できます。
- 利点: 広告ブロッカーやブラウザのプライバシー設定に影響されにくく、正確なデータ収集が可能です。
6. ユニバーサルID
- 概要: ユーザーが異なるウェブサイトやアプリ間で一意に識別されるIDを使用し、ユーザーの同意のもとでデータを追跡する方法。ユーザーのメールアドレスや電話番号などをハッシュ化して一意のIDを生成します。
- 利点: 複数のプラットフォーム間での統一的なユーザー識別が可能となり、ターゲティング広告や効果測定が容易になります。
3rd party cookieの総括
3rd party cookieの廃止は、デジタルマーケティング業界にとって一大転換期を迎えることを意味します。プライバシー保護への意識が高まる中、個人情報の取り扱いにおける透明性と信頼性がますます求められ、これまでのような広範なユーザー追跡に頼る手法から、ユーザーの同意と信頼を基盤にしたデータ活用へとシフトする必要があります。
企業や広告主は、ファーストパーティデータの収集と活用を強化し、ユーザーにとって価値のあるパーソナライズド体験を提供することが重要です。また、コンテクスチュアルターゲティングやサーバーサイドトラッキングといった代替手法の活用が、今後のマーケティング戦略において鍵を握るでしょう。さらに、Privacy SandboxやユニバーサルIDといった新技術の普及が進むことで、広告の精度向上とプライバシー保護の両立が期待されています。
企業は、この急速な変化に迅速に対応し、ユーザーの信頼を得るための取り組みに努める必要があるのです。ただ、とは言ってもマーケティングやデータ周りに対する深い知見がないと、対応や対策は難しいもの。当社では、過去多くの企業様に対してファーストパーティーデータに対する取り組みを支援してまいりました。もしお困りのことがあれば、きっと力になれることと存じます。
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