スコアリングとは?意味や手法に分析方法などマーケティング活用のポイントを解説
スコアリングの意味や手法に重要性などを解説します。実際の成功事例や失敗事例を通じて、スコアリングの分析がマーケティングにどのように有効なのか把握しましょう。記事の後半では、導入や運用のポイントもまとめていますので、ぜひ最後までご覧ください。
▼この記事でわかること
- スコアリングの概要と、導入することで得られるメリット・デメリット
- 実際の成功事例・失敗事例を通じた、スコアリング導入のポイントや注意点
- スコアリングモデルの構築手法や、活用できるツール・サービス
スコアリングとは?最初にその意味をかんたん解説
「スコアリング」とは、顧客・見込み客の行動や属性を定量的に評価し、ビジネス上の優先度を可視化する手法を指します。
たとえば、メールを開封した回数やWebサイトへの訪問回数、フォーム入力などの行動データを数値化し、見込み度合いが高い人を特定してアプローチを最適化することが可能です。
スコアリングの代表的な例としては、MA(マーケティングオートメーション)で活用される「リードスコアリング」や、既存顧客を対象とした「顧客スコアリング」などが挙げられます。これらの手法によって、どの顧客層にどんな施策を打つべきかを可視化し、マーケティング活動の効果を高めることが期待できます。
スコアリングのメリットについて
スコアリングのメリットを確認しましょう。
1. 見込み度の高い顧客を優先的にアプローチできる
スコアリングを導入すると、見込み度合いが高い顧客を早期に発見できるようになります。営業リソースやマーケティング施策を集中させることで、効率的なリードナーチャリングや売上増加が期待できます。
2. 営業・マーケティングの連携がスムーズになる
スコアリングに基づいて「リードが一定のスコア以上になった時点で営業チームへ渡す」といったルールを構築すれば、部門間の連携が可視化されやすくなり、適切なタイミングでアプローチができます。
3. データドリブンな意思決定が可能
スコアリングのプロセスでは行動データや属性データを活用します。そこから得られる顧客行動の定量的な分析結果は、製品やサービスの改善やコンテンツ戦略の見直しにもつながります。
4. パーソナライズ施策の精度向上
顧客や見込み客をスコアに応じてグルーピングすると、そこに合わせたパーソナライズされた施策を実行しやすくなります。メール配信や広告出稿などで一律のメッセージを送るよりも、高い反応率を得られる可能性が高まります。
スコアリングのデメリットについて
どんなことでも、メリットばかりとはならないもの。スコアリングにもデメリットが存在します。導入前に、把握しておきましょう。
1. スコア指標の設計が難しい
企業ごとに集められるデータや活用したい要件が異なるため、どのような指標を元にスコアリングするのかを決めるのは容易ではありません。指標選びを誤ると、実際の見込み度合いとスコアに乖離が生じ、成果を得にくくなる場合があります。
2. 運用に手間がかかる
スコアリングモデルは、一度作って終わりではなく、継続的なチューニングが欠かせません。新しい商品やキャンペーンがリリースされたり、市場環境が変化したりすると、スコアリングのウェイトや項目の見直しが必要です。
3. データが不足すると精度が上がらない
スコアリングの前提として、豊富な顧客データを蓄積していることが望ましいです。データが少ない段階では誤差が大きくなり、十分にアクションにつなげられない可能性があります。
4. リソース投下に見合わないケースがある
スコアリングは仕組みづくりやデータ整備にコストがかかります。十分な効果検証を行わずに導入してしまうと、時間や費用をかけたわりに成果が得られない場合もあるため、事前の検討が重要です。
スコアリングの導入事例
ここでは、実際にスコアリングを導入した企業の成功事例・失敗事例を紹介します。具体的なケースを知ることで、自社で取り組む際のヒントが得られるはずです。
スコアリングの成功事例1
事例:ITサービス企業A社
- 背景:見込み客の問い合わせ件数は多かったが、成約率が低下傾向にあった。
- 施策:顧客のWebサイト滞在時間・資料ダウンロード回数・メールのクリック数などを総合してスコアリングを実施。
- 成果:スコアが高いリードに優先的に営業がアプローチした結果、成約率が約1.5倍に向上。同時にスコアが低い層には、セミナー招待やホワイトペーパー提供などの施策を行い、長期的なリードナーチャリングにつなげた。
スコアリングの成功事例2
事例:EC事業者B社
- 背景:リピート購入を促進したいが、どの顧客を重点的に育成すべきか明確ではなかった。
- 施策:購入金額・購入頻度・レビュー投稿数などのデータを基にスコアリングを実施。上位顧客には感謝クーポンや限定イベント招待などを提供。
- 成果:上位スコアの顧客を中心に年間購買額が2割増。また、スコアに基づくキャンペーンが好評で、口コミによって新規顧客も増加した。
スコアリングの失敗事例1
事例:人材サービス企業C社
- 背景:外部コンサルティング会社の提案でスコアリングを導入。
- 原因:スコアリング設計段階で社内の実態を十分に調査せず、指標が外部の一般モデルに依存していた。
- 結果:自社の強み・対象顧客の特性が反映されないままスコアを運用したため、優先的にアプローチしたリードは成約に結びつかず、結局スコアリングを停止してしまった。
スコアリングの失敗事例2
事例:製造業企業D社
- 背景:展示会で集めた名刺データを活用してリード獲得を進めたいと考え、スコアリングを導入。
- 原因:展示会で集めた情報が名刺だけで、行動ログや購入履歴などの具体的な行動データが不足していた。
- 結果:ほとんどのリードが似たようなスコアになり、スコアリングによる優先度の違いを見出せず、施策が分散。十分な成果を得られなかった。
事例からわかること
成功事例からは、スコアリングを実施することでリードの優先度を明確にし、最適なタイミングで営業やマーケティング施策を行うことが効果的であることが分かります。しかし、失敗事例の通り、内部の実態に即したスコア指標を選定しないことや、必要なデータを網羅しないまま運用すると、期待通りの成果が得られず、スコアリングが機能しないことがわかります。
スコアリングの手法について
スコアリングの手法には、どのようなものがあるのでしょうか?運用のためのポイントを抑えておきましょう。
どのようにスコアリングモデルを構築・運用するのか?
- 目的・ゴール設定
- まずは「リードの優先度をはっきりさせたい」「リピート購入を促進したい」など、導入目的を明確化しましょう。
- 指標の選定
- 自社が取得しやすいデータ・顧客行動と直結するデータを洗い出し、それをスコアに反映できるよう指標を選択します。
- スコアの設定・重み付け
- 指標ごとに重みを決め、ポイントを付与します。たとえば、メールの開封1回=1点、資料ダウンロード1回=5点、といった具合です。
- スコアリングモデルのテスト運用
- テスト環境や一部のリードに対して、スコアリングを試験的に導入し、結果を検証します。
- スコアのチューニング・改善
- テスト結果や営業チームからのフィードバックを受け、重み付けの調整や指標の入れ替えを行い、精度を高めていきます。
- 運用体制の整備
- 営業チームとの連携フロー構築や、マーケティング施策への落とし込みなど、スコアリング結果を実際に活用できる仕組みを整えます。
スコアリングに用いる指標について
スコアリングで使われる指標は、大きく「属性系」と「行動系」に分けられます。
- 属性系指標:企業規模、業種、担当者の役職、購買頻度、顧客ランク など
- 行動系指標:Webサイトのアクセス回数、メール開封やクリック回数、資料ダウンロード、イベント参加 など
企業のビジネスモデルや扱う商材によっては、SNS上でのエンゲージメントやオンラインセミナー視聴時間などの指標を取り入れるケースもあります。重要なのは、自社の目的に合致した指標を選ぶことです。
スコアリングができるツールやサービスについて
スコアリングを実行するには、MAツールやCRMツール、CDP(Customer Data Platform)といったシステムとの連携が有効です。代表的なサービスとしては以下のような例があります。
- MAツール:HubSpot、Marketo、Pardotなど
- CRMツール:Salesforce、Microsoft Dynamics 365 など
- CDP:Treasure Data、Adobe Experience Platform など
これらのツールでは、あらかじめスコアリング機能が備わっており、指標の設定やスコアリングのルール構築をGUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)で行えるのがメリットです。自社の既存システムとの連携や導入コスト・運用コストを見極めながら、適切なサービスを選びましょう。
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総括:スコアリングで分析しよう
スコアリングは、顧客や見込み客の行動・属性を定量化し、マーケティング施策や営業活動の優先度を可視化する強力な手法です。上手に導入できれば、見込み度の高い顧客への集中投下や、部門間のスムーズな連携、そしてデータドリブンな意思決定が実現できます。
ただし、スコアリングは導入・運用のハードルが決して低くはありません。データが不足していたり、スコア指標を誤って設定したりすると成果は得られにくくなります。継続的なチューニングや関係部署との協力がカギとなるでしょう。
本記事で紹介した成功事例や失敗事例、そして具体的な運用フローやツールなどを参考に、ぜひ自社に最適なスコアリングの仕組みを構築してみてください。結果として、顧客とのエンゲージメント強化と売上拡大を両立できる可能性が大いに高まることでしょう。