LTVとは?わかりやすく解説!計算方法やマーケティング・広告のLTV向上施策も紹介
LTV(顧客生涯価値)とは何か、なぜ重要なのか、そして具体的にどう改善するのかを成功・失敗事例を交えてわかりやすく解説します。広告費やマーケティングを最適化し、長期的な収益拡大を目指すためのLTV向上施策も詳しく紹介しますので、ぜひご覧ください。
▼この記事でわかること
- LTV(顧客生涯価値)の基本概念と計算方法
- LTVを高めるための具体的な施策とその成功・失敗事例
- CACやChurn Rateなど、LTV改善とセットで押さえておきたい指標の重要性
広告やマーケティングのLTVとは?わかりやすく解説
LTV(LifeTime Value)とは、顧客が自社の商品やサービスを利用し続けることで、企業にもたらす長期的な利益(価値)の総額を指します。
マーケティングや広告分野で「LTV」と言えば、多くの場合「顧客生涯価値」を意味します。新規顧客を獲得する「瞬間的な売上」よりも、顧客が長期間にわたり商品やサービスを利用してくれることでどれだけの収益をもたらすかを測る指標です。
たとえば、
- ECサイトで定期購入(サブスク)をしている顧客
- SaaS型サービスを有料契約しているユーザー
- リピート購入し続けてくれるファン顧客
これらの顧客が、どれくらいの期間利用し続け、どれだけの売上をもたらすかを算出することで、単純な「売り上げの増減」だけでは把握しきれない長期的なビジネス価値を計測できます。
なぜマーケティングや広告で重要視されるのか?
1. マーケティング投資の判断材料になる
LTVを算出すると、顧客1人あたりにかけてもよい広告費やマーケティングコストを把握できるようになります。
- 広告費に対してどれだけのリターンが見込めるのか?
- そもそも顧客獲得単価(CPA)と比較して、利益はプラスになるのか?
こうした疑問に答えるために、「LTVとCAC(顧客獲得コスト)」のバランスを見ることは必須です。LTVが高い顧客層を獲得すれば、多少広告費がかかっても利益を生み出せる可能性が高まります。
2. リピート獲得やクロスセルに効果的
LTVを高める=顧客が長期的に利用・購入を続けてくれる状態を作るということです。
LTVを重視する考え方が浸透してくると、以下のような施策がより注目されます。
- 既存顧客への定期的なコミュニケーション(メルマガ、SNSフォローなど)
- クロスセルやアップセルの提案
- カスタマーサクセス施策の強化
新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係性を深めるマーケティングも含めて全体最適が図れるのです。
3. 競合との差別化に役立つ
たとえ短期的な割引やクーポン施策などで売上を伸ばしても、その顧客がすぐ離脱してしまう場合、長期的に見ると利益貢献は低くなってしまいます。一方、LTVが高い顧客は離脱率が低く、継続的に商品・サービスを利用し続けます。
つまり、顧客との持続的な関係構築ができている企業ほど、長期的にも安定収益を確保できるという点で、競合との差別化要因にもなるわけです。
LTVの計算方法について
LTVの計算式はビジネス形態によってさまざまですが、代表的な例としては以下の2パターンがよく使われます。
1. 単純計算式
LTV = 顧客単価 × 購買頻度 × 継続期間
- 顧客単価
1回あたり、または1ヶ月あたりの平均購入額(ARPU: Average Revenue Per User など) - 購買頻度
一定期間(1年など)に何回購入しているか - 継続期間
何ヶ月 or 何年購入し続けるか
例えばECサイトで年に6回買い物をする顧客がいて、1回あたり5,000円の購入をし、継続期間が3年であれば、
LTV = 5,000円 × 6回 × 3年 = 90,000円
となります。
2. 収益率や解約率を考慮した計算式
SaaSや定期課金(サブスク)モデルの場合は、「解約率(Churn Rate)」を考慮して計算することが多いです。
LTV = ( 1ヶ月あたりの平均利益 ) ÷ ( 月間解約率 )
たとえば、1ユーザーから1ヶ月あたり2,000円の利益があり、毎月解約率が5%(0.05)だとすると、
LTV = 2,000円 ÷ 0.05 = 40,000円
この場合、ユーザーが離脱せず継続する限り、将来的には平均4万円の利益をもたらすと見込めます。
尚、これらの計算式はあくまで基本形です。実際のビジネスに合わせて変数や期間設定をカスタマイズし、より精度の高いLTVを算出しましょう。
LTVを向上させるための施策
以下では、LTVを向上させるために重要な5つの施策について紹介します。事例も挙げていますので、ぜひ参考にしてみてください。
1. オンボーディングの強化
新規顧客が使い始める段階でのサポート体制や操作説明などを充実させ、離脱率を下げる。
具体的な事例1:SaaS(BtoB向け営業支援ツール)企業のケース
課題: 新規ユーザー登録後の使い方が分からず、1ヶ月以内に解約してしまう顧客が多かった。
施策: 導入後すぐに利用の流れを説明するオンラインチュートリアルや動画マニュアルを用意。加えて、初期設定時に専属サポートが15分のオンラインミーティングを実施し、疑問点をフォローする。
効果: 新規顧客が「使いこなせないままやめてしまう」ケースが減少。結果的に初月の解約率が30%低減し、LTV向上に直結。
具体的な事例2:ECサイト(ファッション通販)企業のケース
課題: 初回購入の後に「サイズ感やコーディネート方法が分からない」と問い合わせが増加し、離脱率が高かった。
施策: 購入後に「サイズ別の着こなしガイド」「着回し提案の特集ページ」へのリンクを自動送信。初回購入者限定でスタイリストとのチャット相談を無料開放。
効果: 不明点が事前に解消され、初回購入者の2回目購入率が大幅に上がった。
ポイント
- 初心者目線で使い方や活用法を分かりやすく伝える。
- 1対1のサポートが可能なら、短時間でも顧客満足度が大きく向上。
- 最初の1〜2回の利用体験がLTVを大きく左右する。
2. リテンション施策の充実
メルマガやアプリのプッシュ通知、SNS投稿などによる顧客との継続的な接点づくり。ユーザーヒアリングを行い、機能改善や要望を早期に反映する。
具体的な事例1:オンライン英会話サービス
課題: 入会後、モチベーションが下がったタイミングで解約する人が多い。
施策:
- 受講しない日が3日続くと、モチベーションを回復させるための「英語学習ヒント」メールを自動配信。
- 定期的に学習進捗に関するアンケートを実施し、要望を分析してレッスン内容に反映。
効果: 「やめようか迷っていた」顧客がレッスンに戻ってくる割合が増加し、平均継続期間が延びた。
具体的な事例2:サブスク型コスメブランド
課題: 定期購入している顧客が商品に飽きてしまい、途中で解約してしまう。
施策: 商品開発チームと顧客が直接対話できるオンラインイベントを定期開催。次回新作コスメの色味や香りなどのリサーチを実施してフィードバックをすぐ商品化。
効果: ユーザーが「自分の意見が商品づくりに生かされる」と感じ、ブランドロイヤルティが向上。結果的に解約率が減少。
ポイント
- 顧客との接点を切らさないために、タイミングやコンテンツの質が重要。
- ヒアリングの結果を施策に反映する“スピード感”が顧客満足度を高める。
3. クロスセル・アップセル
顧客が購入する関連商品や上位プランを提案し、単価の引き上げを図る。サービスと相性の良いオプション機能などで顧客満足度を高める。
具体的な事例1:大手ECプラットフォーム(例: Amazon)
有名な施策: 「この商品を買った人は、こんな商品も購入しています」のレコメンド機能。
狙い: 購入時の関連商品(アクセサリやメンテナンスグッズなど)を一緒に買うことで、顧客が商品をより快適に使えるようになる&売上単価も上げられる。
具体的な事例2:BtoB向けSaaSツール
課題: 基本プランを使っている企業が、顧客データを分析・活用しきれていない。
施策: 「上位プランへアップグレードすれば、詳細なレポート機能や自動分析ツールを利用できる」と提案し、実際のレポートサンプルを見せる。
効果: アップセルにより利用価値が高まり、顧客の業務効率が改善。高額プランを契約し続けるため、LTVが2〜3倍に拡大。
ポイント
- クロスセルは「顧客の目的達成をサポートするための商品」を案内するイメージ。
- アップセルは「上位プランでさらに快適・効率的に利用できる」と感じてもらえるような具体的なメリット提示がカギ。
- 単に“高額商品を勧める”だけだと逆効果になりかねない。あくまで顧客の利便性や満足度向上が目的。
4. カスタマーサクセスチームの配置
導入後の成果を顧客と共有し、ゴール達成を支援する仕組みづくり。問題点を早期に発見し、解約・離脱を最小化する。
具体的な事例1:BtoB向けマーケティング自動化ツール(MAツール)企業
課題: 導入企業が増えた一方で、「機能が多すぎて使いこなせない」という声が多く、契約更新率が伸び悩んでいた。
施策: 専任のカスタマーサクセス担当を配置し、導入企業ごとに導入目的の再確認 → 運用支援 → 定期レポートのサイクルを構築。
効果: 顧客側の利用状況や成果を定期的に可視化・共有することで、解約率を抑制。更新率が30%向上し、LTV増に貢献。
具体的な事例2:BtoC向け学習サービス
課題: 個人学習者がモチベーションを失いがちで、途中退会が多かった。
施策: カスタマーサクセス担当が月1回、学習内容をレビューし、進捗や弱点を一緒に分析。学習計画を提案し、クリアできた際には小さな達成報酬(ポイント付与)を設定。
効果: 学習継続率が大幅に改善し、“途中退会ゼロ”の月も出始めた。
ポイント
- カスタマーサクセスは「導入後の顧客が成功するまで責任を持つ」のが役割。
- **定量的な数値(成果)と定性的な声(感想)**の両面からフォローするのが効果的。
- 課題を先回りで解決する姿勢が顧客満足度のアップ、ひいてはLTV向上につながる。
5. コミュニティ作り(ファン化)
ユーザー同士の交流の場(オンラインコミュニティやユーザー会)を設ける。商品やサービスへのロイヤルティを高め、長期利用につなげる。
具体的な事例1:美容系SNSアプリのコミュニティ運営
取り組み: アプリのユーザーが「おすすめコスメの口コミを共有できるコミュニティ」を設置。イベントやライブ配信でプロのメイクアップアーティストがユーザー投稿をピックアップする企画を実施。
結果: ユーザー同士が積極的に交流し、アプリの利用頻度・滞在時間が増加。口コミを見たユーザーが新商品の購入に繋がる流れができ、顧客一人あたりの購入額が上昇。
具体的な事例2:コンシューマー向けIoT製品(スマート家電)
取り組み: ユーザー会やオンラインフォーラムを通じて、「もっとこんな機能が欲しい」という要望を定期的に収集。
結果: ロイヤルユーザーからの建設的なアイデアを製品改良に生かすことで「ユーザーと一緒に製品を育てる」企業姿勢が高評価。離脱率が下がり、継続的な買い替え・周辺アイテム購入につながる。
ポイント
- コミュニティを活性化させるには、運営側の定期的なイベント企画や発信が欠かせない。
- 顧客同士の結びつきが強まるほど、ブランドやサービスへの愛着も高まる。
- コミュニティ参加者が新たなアイデアを提案し、開発や改善に協力してくれるケースも多い。
これらの施策を組み合わせるメリット
- 離脱率の低減
- 新規顧客の離脱を防ぐためのオンボーディングやカスタマーサクセス、定期的なコミュニケーションが効く。
- 購入額や利用期間の延長
- クロスセル・アップセルやコミュニティ施策によって顧客の満足度・ロイヤルティが高まると、自然と追加購入や継続利用に繋がりやすい。
- 口コミ・紹介の増加
- ファン化した顧客は商品・サービスを自発的に周囲へ紹介してくれ、獲得コストをかけずに新規顧客が入ってくる好循環が生まれる。
これらの施策を同時に、または段階的に組み合わせながら実行することで、短期的な売上だけでなく中長期的な継続利用や売上アップが期待でき、結果としてLTV(顧客生涯価値)を大幅に高めることができます。
LTV改善の失敗事例
上記では、LTV向上のための施策とその成功事例を紹介しましたが、失敗事例を抑えておくことも重要です。同じ失敗を回避するため、下記事例も抑えておきましょう。
失敗事例1:教材サブスクC社
取り組み: 新規会員向けに大幅な割引キャンペーンを実施し、短期的には大量の新規ユーザーを獲得。
問題点: キャンペーン後に割引が終了すると、利用価値を感じず退会するユーザーが急増。アプリ自体の品質改善やサービスの充実化が不十分だった。
結果: 新規顧客の解約率が非常に高く、LTVはほとんど向上せず広告費だけがかさむ状態に。
失敗事例2:SaaSサービスD社
取り組み: アップセルに注力し、高額プランへの移行を強く促すメールを頻繁に配信。
問題点: 強引なアプローチにより、ユーザーがサービスを“押し売り”と感じてしまい、信頼を損ねて解約が増加。
結果: 単価アップよりも離脱のほうが大きく、LTVの低下を招いてしまった。
事例からわかること
- 継続して利用してもらうための価値を提供できていないと、短期的な顧客獲得だけで終わってしまう。
- 顧客目線のコミュニケーションが欠けると、離脱率が増え、結果的にLTVが下がる。
- 施策自体の効果検証を怠ると、広告費や開発コストだけが増え、かえって利益を圧迫する可能性がある。
LTVと併せて抑えておきたいマーケティング用語集
LTVを理解する上で、抑えておきたいマーケティング用語を紹介します。これらの理解も併せて深めることで、効果的なマーケティングが打てるようになります。
CAC(Customer Acquisition Cost)
顧客1人を獲得するのにかかったコスト。広告費、セールス人件費などを含む。
LTVとCACのバランス(LTV > CAC)がビジネスの持続可能性を左右する。
ARPU(Average Revenue Per User)
1ユーザーあたりの平均売上(課金額)。サブスクビジネスでは特に重要。
Churn Rate(解約率)
ある期間で離脱・解約したユーザーの割合。解約率が下がればLTVは上がる。
Retention Rate(継続率)
Churn Rateの逆。どれだけの顧客がサービスを使い続けるかを示す指標。
Upsell / Cross-sell(アップセル / クロスセル)
顧客により高額な商品や関連商品を購入してもらうこと。
LTVを向上させる代表的な方法の一つ。
KPI(Key Performance Indicator)
重要な評価指標。LTV向上に向け、解約率や平均購入単価など複数のKPIを設計し、モニタリングするのが一般的。
LTVの総括
LTV(顧客生涯価値)は、顧客1人が生涯にわたって企業にもたらす利益の総和を示す重要な指標です。
短期的な売上や新規顧客の獲得数だけを追うのではなく、長期的に見た利益や顧客との関係性を見極めることで、広告費やマーケティング投資を最適化できます。
- 計算式を理解して定期的にLTVを算出する
- 改善施策を打って解約率を下げる/利用単価を上げる
- 効果検証を通じて顧客体験を磨き、継続利用を促す
- 成功・失敗事例から学び、常に軌道修正を行う
こうしたサイクルを回し続けることで、持続的な成長と収益拡大が期待できます。LTVは企業の未来を見通す指針として、今後ますます重要視されるでしょう。