そのスコアリング、正しくできてる!?

MAツールの初心者に向けて、スコアリングの基本を解説!

2022-03-02
Category:
MA

近年、企業の営業・マーケティング活動はデジタル化が進んでおり、マーケティングオートメーションツール(MAツール)が欠かせないツールになってきています。

今回ご紹介する「スコアリング」もMAツールの中にある1つの機能で、上手く活用することで企業の営業・マーケティング活動の生産性向上が期待できます。

しかしながら、

「MAツールを導入するにあたって、スコアリングがわからない…」

「MAツールは導入しているけど、スコアリングを活用できていない…」

このように、MAツールの導入前後で「スコアリング」という言葉は聞いたことあるものの、用語の意味や具体的なやり方について理解が追いついていない、といったお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、そもそもスコアリングとは何なのかといった基本的な説明から、実際にMAツールでスコアリングをご活用いただく方法までを解説しています。

【目次】

・スコアリングとは

・スコアリングによって得られる効果

・スコアリングの方法

・スコアリングの設計例

・スコアリングのコツ

・スコアリングの注意点

・最後に

■スコアリングの基本理解

スコアリングとは

スコアリングとは、見込み顧客(以下「リード」という)を「属性」と「行動」によって点数化し、アプローチの重要度を優先順位づけするための取り組みです。別名「リードスコアリング」とも呼びます。

リードは、企業の商品・サービスに興味を持っており、将来的に購入してもらえると想定される顧客ですが、どんな営業チームも、すべてのリードに均等に力を注ぐ時間は取れません。

そこで、スコアリングを活用することで、スコアが高い顧客を「自社にとっての優良見込み顧客(ホット顧客)」とみなし、積極的にアプローチしていきます。

2つのスコア

スコアリングを実施する際のスコアは、大きく「属性スコア」と「行動スコア」の2つに分けられます。

属性スコアは、顧客情報(役職、業界、従業員数など)をもとに、アプローチの優先度合いを点数化します。一方で、行動スコアは、顧客行動(webサイト訪問回数、メール開封など)をもとに、リードのオンラインやオフラインでの行動を基準に点数化します。

以下の図のように、これら2つのスコアの掛け合わせで、顧客のスコアが決まる形になります。

例えば、顧客が役職者であることで属性スコアが+3点、広告経由での資料請求することで行動スコアがで+5点といった具合で、スコアリングするようなイメージです。

このように顧客をスコアリングすることで、営業活動に取り組むべき有望なホット顧客を特定することができます。

■スコアリングによって得られる効果

スコアリングの基本的な考え方を理解したうえで、ここでは、スコアリングによって企業が得られる効果について見ていきます。

企業はスコアリングを取り入れることで、以下4つの効果が見込めます。

1.リードを可視化できる

スコアリングを行うと、属性や行動のデータに基づき、リードの確度を数値で表し、可視化できます。これにより、潜在層と顕在層を明確に分けられるため、顧客の製品・サービスへの興味関心度や理解度に合わせて、アプローチすることが可能です。そのため、企業がマーケティングや営業するうえで、優先度を決めやすくなります。

2.マーケティングのデジタル化に繋がる

スコアリングを導入すると、マーケティングはデジタル化され、様々な状況において数値による管理が可能になります。数値によってリードをセグメントすることで、ステージに合わせた施策展開ができます。また、施策展開の結果も数値で反映されるため、数値に基づいてPDCAを回しやすくなります。

3.営業とマーケティングの連携強化になる

営業とマーケティング間でホット顧客を定義することで、営業対象の基準とプロセスが明確になります。スコアリングを取り入れることで、マーケティング部門はホット顧客を営業部門に渡すことができますし、営業部門はホット顧客と触れた結果をマーケティング部門にフィードバックすることができます。

上記のように、企業はスコアリングを取り入れることで、自社のリードが自動で可視化される、営業とマーケティングの効率が高まるなど、ビジネスに数多くのメリットをもたらします。

■スコアリングを実施しない場合に起こりうる問題

1.営業とマーケティングで重複アプローチが発生する

スコアリングを実施しない場合、営業とマーケティングが同じリードに対して重複してアプローチしてしまう可能性があります。

例えば、営業から直接アプローチしているホット顧客であるにもかかわらず、マーケティングから自社の案内メールを送ってしまうということが起こり得ます。

これが顧客にとって心地よい顧客体験でないことは容易に想像できることでしょう。

2.顧客の取りこぼしが発生する

スコアリングを実施しない場合、アプローチするリードの優先順位が可視化できず、スコアが高いリードを取りこぼす可能性があります。

例えば、本来は営業から直接アプローチすべきホット顧客であるにもかかわらず、マーケティングからメールを送るだけに留まってしまうといったことが起こり得ます。

これが企業にとって本来成約に至る顧客を取りこぼす機会損失になっていることは容易に想像できるでしょう。

■スコアリングの方法

スコアリングによって得られる効果、実施しない場合の問題をイメージできたうえで、ここでは、具体的なスコアリングの方法について解説します。

前提として、スコアリングは営業とマーケティングが協力しながら進めるものになります。スコアリングをより効果的なものにするためには、それぞれの知見を持ち合わせることが必要不可欠です。

1.3つの切り口でホット顧客を定義する

これらの前提を踏まえて、まず「自社にとっての優良見込み顧客(ホット顧客)」を属性、行動、活性度といった3つの切り口からスコアリングします。ここでは、ホット顧客を「営業が商談しても効率的に契約を取りやすいと想定される顧客」と定義します。

具体的には、以下3つの切り口でスコア付けしていきます。

a.顧客の属性

例えば、顧客が役職者であることで+5点、すでに他社の製品を使っている場合+5点など、担当者の立場や競合する商品・サービスの利用状況により優先順位づけをします。

担当者が、意思決定権限を有していたり、製品への理解度が高い場合といった顧客の属性は、成約の可否を大きく左右する要素になってきます。

b.顧客の行動

展示会・セミナーへの参加やウェビナーの視聴、無料トライアル、あるいは比較表・料金表、サービスサポートページなどの閲覧といった行動に対して加点します。

こうした行動から、リードがどれほど自社の商品・サービスに興味を持っているかを把握することで、顧客のステージに合ったアプローチを行います。

c.顧客の活性度

bの行動が最近のものか、古いものかの違いにより、顧客の興味・関心の高まり度合いは異なります。

例えば、数か月前に頻繁に行動していた顧客では、既に他社商品・サービスを購入してしまっている可能性があったり、何らかの事情により検討を中断しているかもしれません。逆に、ここ数週間の間に、頻繁にウェブサイトを訪れている場合には、一刻も早くアプローチすることで商談につながる可能性を高めることができます。

このような考え方のもと、例えばウェブサイトに直近○日以内にアクセスがあったか、直近1週間に○回以上のアクセスがあったかなどで加点を行います。

これら3つの切り口から、顧客の状況に合わせて適切なスコアを付与することで、顧客をランク付けします。

【例】

・役職が部長クラス:+20点

・Eメールを開封:+5点

・Eメールをクリック:+10点

・遷移先のサイトで資料ダウンロード:+15点

上記のようにスコアを付与した場合、全スコアを合計した+50点以上の顧客がホット顧客であるということになります。

ただし、3つの切り口のうち、aは容易に把握することができますが、bとcは顧客行動からスコアリングを設計する必要があります。

そのため、自社の顧客がどのような行動を経て成約に至るのか、といった顧客行動の流れ(カスタマージャーニー)を抑えることが重要になります。その際、実際に顧客と向き合う営業の意見も取り入れて設計することが有効的といえるでしょう。

2. ホット顧客から優先的にアプローチする

次に、付与したスコアが高い顧客(ホット顧客)から優先的にアプローチしていきます。先の例で言うと、+50点以上の顧客については営業から商談の機会を設け、積極的に提案してもらうといったアプローチが可能です。

その結果、ホット顧客からの成約率が高ければ、スコアリングが成功したと言えるでしょうし、逆に成約率が低ければホット顧客の定義を見直したり、ホット顧客へのアプローチを変えたりする必要があります。

3.現場からのフィードバックをもとにスコアリング項目を見直し続ける

最後に、営業がホット顧客へアプローチした結果をもとに、スコアリング項目を見直します。

営業は、顧客がどのような状況で自社の製品と出会い、どこに価値を感じて成約に至ったのか、といったスコアリングの設計に必要な要素を熟知しています。これらの情報は、顧客の興味(顧客行動)に関するスコアリングの設計に際して、不可欠な要素といえるでしょう。

そのため、スコアリングの設計にあたっては、ホット顧客にアプローチした結果を営業からヒアリングし、そのフィードバックをもとに、より精度の高いスコアリングをし続けることが重要になります。

■スコアリングの設計例

では、実際にMAツールでスコアリングの設計をしてみましょう。今回はOracle社が提供するBtoB向けのMAツール(Eloqua)を用いて設計してみます。

1.モデルの作成を選択

下記がEloquaでスコアリングを設計する際のトップ画面になります。まずは「モデルの作成」をクリックし、自社のホット顧客をスコアリングしていきます。

2.プロファイル(属性スコア)のスコアリング

「モデルの作成」をクリックすると、以下の画面に切り替わりますので、ここから具体的にモデルを作成していきます。Eloruaでは「プロファイル」が顧客の属性スコア、「エンゲージメント」が顧客の行動スコアを指します。

まずはプロファイルからスコアリングしていきます。画面の左部にスコアリング項目(フィールド名)がありますので、自社のホット顧客を定義するうえで必要なフィールドを選択します。

今回はジョブ・ロール(役職)、業種、年間売上を選択しました。右部の割合は、スコアリングするうえでどの項目を重視するかを指しており、全部で100%になるように調整します。

すなわち、下記の例では、スコアリングする際にジョブ・ロールに振られる点数割合が高いということになります。

3.エンゲージメント(行動スコア)のスコアリング

続いて、エンゲージメントのスコアリングをしていきます。プロファイルと同様、画面の左部にフィールド名がありますので、自社のホット顧客を定義するうえで必要なフィールドを選択していきます。

今回はEメールのオープン状況、Eメールのクリック状況、ランディングページの訪問状況を選択しました。こちらに関しても、右部の割合でどの項目を重視するかを調整します。

下記の例では、ランディングページの訪問状況に振られる割合が高いということになります。「Eメールをオープンしているだけの顧客」よりも「ランディングページに訪問している顧客」の方がスコアが高くなることは容易に想像がつくことでしょう。

4.プロファイルとエンゲージメントのしきい値の設定

最後に、右上の「保存」を押して、1つのスコアリング・モデルが完成します。この時、プロファイルとエンゲージメントのしきい値を設定することができます。

下記の例では、プロファイル・スコアが75%より大きい顧客はA、エンゲージメント・スコアが40%より大きく75%より小さい場合はB、ということになります。

上記の流れでスコアリングを設計することで、自社のリードに優先順位がつけられ、営業があたるべきホット顧客を自動で抽出することができます。

■スコアリングのコツ

ここまでお伝えした流れで、実際にスコアリングを行っていきますが、より成功確度を高めるためのコツが3つあります。

1.いかにホット顧客を正確にとらえられるか

まず、最初に定義したホット顧客を正確にとらえることが重要です。

例えば、前章の例で挙げた+50点以上の顧客に営業をかけたところ、全く検討の余地がなかったとします。この場合、最初に定義したホット顧客が間違っていたことになります。

最初からホット顧客を正確に定義できるよう、普段から直接顧客と接する営業の意見を取り入れるなどすることで、スコア付けしていくことが重要になります。

2.ホット顧客になりうるリードを集められるか

次に、いかにホット顧客になりうるリードを集められるかがポイントです。

ホット顧客を正確にとらえることができたものの、そもそもホット顧客になりうるリードを集められなければ、成約数を高めることはできません。

前章でもお伝えしましたが、自社の顧客がどのような行動を経て成約に至るのか、といったカスタマージャーニーへの理解は常日頃から深める必要があります。

ホット顧客になりうるリードは、どんな属性でどんな行動をしているのか、ここの理解を深めることで、よりスコアリングの効果を高めることができます。

3.現場からのフィードバックを集めてスコアリング項目をチューニングするか

最後に、現場からフィードバックを集めてスコアリング項目をチューニングし続けることも重要なポイントです。スコアリングは一度行えば終わりではありません。

*チューニングは楽器の音合わせと同じようなイメージで、ここでは「正しいスコアリング項目を設定すること」と定義します。

例えば、前章の例で挙げた+50点以上の顧客に営業をかけたところ、全く検討の余地がなかったとします。この場合、スコアリング項目の何が間違っていたのか、を検討してスコアリング項目を入れ替える必要があります。

反対に、+50点以上の顧客に営業をかけて成約に繋がった場合、より成約率を高めるためにスコアリング項目に過不足がないか、検討します。

上記のように、スコアリング項目をチューニングすることで、成約率の改善をし続けることがスコアリングを成功させるためのコツになります。

■スコアリングの注意点

最後に、スコアリングを実施するうえでの注意点をお伝えします。

1.常にチューニングが必要

まず「常にチューニングが必要なので、1回設定したら終わりではない」ということです。

例えば、スコアリングではホット顧客だと定義した顧客であっても、実際に営業が現場で話を聞いてみたところ、ホット顧客ではなかったという可能性も考えられます。

この場合、営業からのフィードバックを踏まえて、「遷移先のサイトで資料ダウンロード」はホット顧客の要件ではないと考え、スコアリング項目を入れ替えるといった対応が必要になります。

スコアリングは属性や行動によって加算されるため、ルールの精度が低いと購買意欲が低くても高得点がついてしまうこともあります。

ルール設計は定期的な見直しとアップデートを行い、購買意欲が高い人に高いスコアがつくよう精度を上げていきます。ルール設計の精度が低い状態のスコアリングには、このような弱点があることも理解した上で活用しましょう。

2.スコアリングに依存しすぎない

次に「スコアリングに依存しすぎない」ということです。

例えば、スコアリングを設計した結果、「ほぼ毎日自社のブログを閲覧しているスコア50点のA社」と「過去7日以内に問合せを2回しているスコア40点のB社」がいたとします。

この場合、B社の方が成約率が高いであろうことが想像できます。すなわち、スコアリングだけでは読み取り切れないニーズがあるということです。

この前提を踏まえて、スコアリングに依存しすぎず、自社の顧客がどのような行動を経て成約に至るのか、常に目を張っておくことが重要になります。

■最後に

ここまでスコアリングとはそもそも何なのかといった基本的な説明から、実際にMAツールでご活用いただく方法までを解説してきました。

スコアリングはホット顧客を自動で抽出し、マーケティングのデジタル化を推進するだけでなく、営業とマーケティングの連携が強化され、顧客の取りこぼしを防げるなど、ビジネスに数多くのメリットをもたらします。

ただし、スコアリングは一度設計したら終わりということではなく、現場からのフィードバックをもとに継続的に最適化していく取り組みが重要になります。

これからMAツールを導入される方はもちろん、導入しているけどスコアリングを活用してこなかった方も、ぜひスコアリングを取り入れてみてはいかがでしょうか。

ぜひ、MAツールを適切に活用しながら継続的にPDCAを回し、スコアリングの精度を高めながら成果を確実なものにしていきましょう。

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