チャーンレートとは?計算方法や平均目安に改善方法などを詳しく解説
チャーンレートとは?を端的にご紹介。また、その計算方法や業界別の平均目安に具体的な改善策までを包括的に解説いたします。併せて、改善施策の成功事例と失敗事例もありますので、具体的に改善策を知りたいマーケター様は必見の内容となります。
▼この記事でわかること
- 各種ビジネスにおけるチャーンレートの重要性
- チャーンレートの改善策
- チャーンレート改善の事例と、そこから得られる学び
チャーンレートとは?簡単に解説
チャーンレート(Churn Rate)とは、サービスや製品を利用していた顧客・会員が、一定期間内に解約や利用停止などによって離脱する割合を示す指標です。
特にサブスクリプション型(継続課金型)のビジネスモデルにおいては、新規顧客の獲得コストが高額になりがちであるため、既存顧客に継続して利用してもらうことが収益拡大の鍵となります。
そのため、チャーンレートを低く抑えることは、事業継続と成長にとって非常に重要です。
チャーンレートの計算方法
チャーンレートの最も一般的な計算方法は以下の通りです。
チャーンレート(%)=(一定期間内に離脱した顧客数 ÷ 一定期間の期初の顧客数)× 100
- 「一定期間」は、月次・四半期・年次など、事業や分析目的に応じて設定します。
- 期初(あるいは期中)の顧客数を母数にし、同期間内で解約・離脱した顧客数の割合を求めます。
- SaaSなどでは、MRR(月次経常収益)に基づいて算出する「レベニューチャーンレート」も用いられます。
ポイント:
- 分析対象期間を明確にし、どの段階の顧客数を母数にするかを統一することで、データ分析や比較が正確になります。
- 新規顧客獲得やアップセルなどの動きも踏まえたうえで、純増減や売上高の推移と合わせて見ると、より深いインサイトが得られます。
チャーンレートの平均と目安
チャーンレートの平均・目安は、業種やサービス内容によって大きく異なります。以下に代表的な業界やサービス形態ごとの一般的な目安を紹介します。
SaaS業界のチャーンレート
目安: 月次で1~2%程度、年間で5~10%程度
背景: BtoB向けSaaSの場合、新規導入のハードルはある程度高いものの、導入後の使い勝手やサポート体制が不十分だとすぐに解約される可能性があります。
ポイント: 導入後のオンボーディングや継続サポートを充実させることで、チャーン率を低く保つことが可能です。
サブスク・ストリーミングサービスのチャーンレート
目安: 月次チャーンレートは2~4%程度
背景: 映画・音楽・動画配信などのコンテンツ系サービスでは、利用者が複数のサービスを乗り換えしやすいため、チャーンが比較的高めになる傾向があります。
ポイント: 常に新しいコンテンツを追加する、アルゴリズムによるパーソナライズを強化するなどで継続利用を促す施策が重要です。
学習サービス系のチャーンレート
目安: 月次チャーンレートは3~5%程度
背景: オンライン英会話やプログラミング学習などは、最初はモチベーションが高くても、学習成果や目標が見えにくいと継続率が下がりやすい特徴があります。
ポイント: 学習進捗の可視化や目標管理、定期的なフィードバックなどを提供し、学習意欲を維持させることがカギです。
ジム・フィットネスクラブのチャーンレート
目安: 年間で30~50%程度(1年以内に解約する人が多い)
背景: 新規入会時はやる気があっても、三日坊主になりがちで利用しなくなる人が多い業界。
ポイント: 定期カウンセリングやトレーニングプログラムの提案など、顧客が続けたくなる仕組みづくりが必要となります。
定期購入型ECのチャーンレート
目安: 月次で5~10%程度
背景: 食材やコーヒー・ワインの定期配送サービスなどは、商品に飽きる、在庫が余るなどの理由で解約が発生しやすいです。
ポイント: お試しセットの拡充やスキップ機能の実装、商品バリエーションの定期的な更新が離脱防止につながります。
チャーンレートの改善方法
ここでは、代表的なチャーンレートの改善方法を5つ紹介いたします。
オンボーディングの強化
- 新規顧客がスムーズにサービスを使い始められるよう、初期設定や操作説明を充実させる。
- 導入直後のサポート体制が整っているかどうかで、解約率は大きく変わります。
カスタマーサクセスの充実
- 定期的なフォローやメンテナンスを行い、顧客が抱える課題を早期に解消する。
- Q&Aセクションやチャットサポートなど、問い合わせしやすい環境づくりが重要です。
プロダクト改善・機能拡張
- 顧客のニーズを先取りし、使いたい機能やコンテンツを拡充する。
- 要望の多い改善点を優先し、サービスの魅力を高めることでチャーン率を下げます。
料金プランの柔軟化
- 無料トライアルや低価格プランを用意し、利用ハードルを下げる。
- 長期契約割引やファミリープランなど多様なプランを提供することで離脱を防ぎます。
顧客コミュニケーションの最適化
- メールやSNS、プッシュ通知などで適切なタイミングで情報提供する。
- 解約を検討している顧客にはアンケートや特典を提示し、離脱理由を把握する姿勢が大切です。
チャーンレート改善の成功事例
改善方法だけ知っていても、イメージはつきにくいものです。ここでは、具体的な成功事例を持って解説いたします。
成功事例1:BtoB向けSaaS企業
課題: 導入直後の顧客が機能を使いこなせず、解約率が高かった。
取り組み:
- 専任のカスタマーサクセスチームを設置
- 1ヶ月以内に機能説明や活用ヒアリングをするオンボーディングプログラムを実施
結果: 月次チャーンレートが3%から1.5%に改善し、サブスクリプション売上が大幅に増加。
成功事例2:定期購入型EC(コーヒー豆のサブスク)
課題: 飲みきれずにコーヒー豆が余り、1~2ヶ月で解約する人が多かった。
取り組み:
- 希望する豆の量・種類を柔軟に選べるプランを追加
- 一時スキップやお届け間隔の調整機能を導入
結果: 「量や頻度が合わない」という離脱理由が激減し、月次チャーンレートが10%→5%まで改善。
成功事例からの学び
導入初期(オンボーディング)のサポートが鍵
- BtoB向けSaaSの事例では、導入直後の顧客が機能を使いこなせない状態が解約につながっていました。
- 専任のカスタマーサクセスチームを置き、初期設定や使い方を丁寧に支援することで、サービスの価値を早期に実感してもらい、解約率の大幅な低減に成功しています。
ポイント: 新規顧客との接点を強化し、顧客が「このサービスを使いこなせる」と感じるまでのサポート体制を整えることが重要。
顧客の利用・購買パターンに合わせた柔軟なプラン設計
- 定期購入型EC(コーヒー豆のサブスク)では、「コーヒー豆が余る」という声から離脱が多かったことが判明。
- 豆の量や種類を自由に選べるようにし、さらに一時スキップ機能やお届け間隔の調整を導入したことで、離脱理由の多くを解消できました。
ポイント: 解約に至る理由を明確に把握し、サービスやプランを顧客にフィットさせる工夫が離脱防止には不可欠。
データに基づく課題発見と対策
- SaaSの例では「機能利用率」、ECの例では「解約時の理由」に着目することで課題を特定し、対策が打てています。
ポイント: データを分析し、解約の理由や利用実態をしっかり把握することが、適切な施策立案の土台となる。
小さな改善でも大きな成果が得られる可能性がある
- SaaSの事例では「オンボーディングに1ヶ月集中してサポートする」という明確な体制づくり、ECでは「量や頻度調整の機能追加」といった特定の課題にフォーカスした施策が成功の要因となりました。
ポイント: 全面改修や大きな投資が必要なわけではなく、顧客の離脱要因をピンポイントで改善する施策が大きな効果を生むことがあります。
継続的なコミュニケーションとフィードバックループ
- 課題を発見し、改善施策を打ち出した後も、顧客の声を集めて再度プランを見直すことで、さらにチャーンレートの改善が可能になります。
ポイント: 施策の効果検証と、顧客の反応をフィードバックして次の施策に繋げるPDCAサイクルを回すことが重要です。
チャーンレート改善の失敗事例
同じ落とし穴にはまらないようにするためにも、失敗事例から学ぶことも重要です。下記事例も抑えておきましょう。
失敗事例1:オンライン英会話サービス
課題: 受講生のモチベーション低下によるチャーンが多かった。
取り組み: 毎日学習を促すメールを大量に送付
失敗原因: 通知が多すぎて逆に顧客がストレスを感じる結果に。クレーム増加により、チャーン率はむしろ上昇。
失敗事例2:サブスク型動画配信サービス
課題: コンテンツのマンネリ化による解約が続出。
取り組み: ユーザーアンケートをとらずに運営側の感覚だけで新コンテンツを追加
失敗原因: ユーザー嗜好との乖離が大きく、魅力的と感じる人が少なかった。コストばかりかかり、チャーン率改善につながらず。
失敗事例からの学び
顧客目線を見失わないこと
- オンライン英会話サービスの例では、「毎日学習を促すメール」の大量送付が逆にストレスやクレーム増加を招きました。
ポイント:コミュニケーション量を増やすほど良いわけではなく、顧客が望む頻度・タイミング・内容を見極める必要があります。
施策前にデータや顧客の声をしっかり収集すること
- サブスク型動画配信サービスの例では、運営側の感覚だけでコンテンツを追加し、ユーザー嗜好と大きく乖離した結果、コストをかけてもチャーン率が改善しませんでした。
ポイント:新たな施策を実施する前に、ユーザーアンケートや行動データなどを活用して、顧客ニーズに合った方向性を把握することが重要です。
施策の「量」だけでなく「質」も重視すること
- 前者のメール施策は量的アプローチに偏り、後者の新コンテンツ追加は「運営側が考えたコンテンツ量の拡充」にフォーカスしていました。
ポイント:実際には量よりも、顧客にとって価値ある内容やコンテンツを提供することが効果的です。
PDCAサイクルを素早く回し続けること
- いずれの事例も、「顧客の反応や離脱理由をすぐに把握し、適切に修正する」というプロセスが不足していた可能性があります。
ポイント:施策を打つ→効果測定→課題抽出→次の施策の再設計、というプロセスを繰り返し改善していくことが欠かせません。
顧客のライフサイクルや心理を理解したコミュニケーションを
- 学習サービスの場合は、学習の進捗度やモチベーションに合わせて接点を増やすのが効果的ですが、「大量の通知」=「丁寧なフォロー」ではありません。
- 動画配信サービスも、ユーザーがどんな気分でどんなコンテンツを求めているのかをデータから推測し、適切な提案や魅力的なラインナップ拡充に繋げる必要があります。
チャーンレートの分析ツールについて
チャーンレートを継続的・多角的に分析するためには、以下のようなツールの活用がおすすめです。
CRM(顧客管理システム)
顧客データや行動履歴を一元管理し、解約の予兆をとらえやすくする。
関連記事:CRMとは?簡単に解説!メリットや事例にツールの選び方まで詳しく紹介
MA(マーケティングオートメーション)ツール
行動履歴やセグメントごとに、最適なタイミングでフォローアップ。
関連記事:MAツールとは?一覧や比較表を駆使し簡単に解説!ツール導入後のポイントも紹介
BI(ビジネスインテリジェンス)ツール
顧客属性・売上データ・行動データを可視化し、離脱傾向を早期発見する。
独自ダッシュボードの構築
自社サービスに特化した指標を設定し、チャーンをリアルタイムで監視する仕組みづくりも有効です。
レベニューチャーンレートとチャーンレートの違い
チャーンレートは顧客数ベースでの解約率を示す指標ですが、レベニューチャーンレートは、収益ベースでの離脱率を示す指標です。一般的には、MRR(月次経常収益)やARR(年間経常収益)を用いて算出されます。
レベニューチャーンレート(%)
= (一定期間内に失ったMRR(あるいはARR) ÷ 期初のMRR(あるいはARR)) × 100
例えば、解約顧客が多くても、アップセルやクロスセルによって収益ベースではあまり減少していない場合、通常のチャーンレート(顧客数ベース)とレベニューチャーンレートでギャップが生じます。
自社のビジネスモデルに応じて、どちらの指標を重視すべきかを検討することが大切です。
総括
チャーンレートはサブスク型ビジネスや長期契約が鍵となるビジネスにおいて、新規顧客獲得以上に重要な指標です。継続的に顧客に価値を提供し、満足度を高めることで離脱を防ぎ、企業の安定成長を実現します。
また、
- 計算方法や業界平均を把握し、定期的にモニタリングする
- サービス内容や顧客ニーズに合った改善施策を継続的に実行する
- 成功事例と失敗事例から学び、顧客の声を分析しながらPDCAを回していく
これらを着実に進めることで、チャーンレートを効果的に低減し、収益の安定化・拡大につなげることが期待できます。