リードナーチャリングとは?方法やBtoC・BtoBの事例などを詳しく解説
リードナーチャリングとは?といった基本からその方法、BtoC・BtoBの具体的な事例、KPI設定やMAツール活用術までを網羅。失敗事例や成功のポイントも解説します。これから実践しようと計画されている企業の皆様は、ぜひ最後までご覧ください。
▼この記事でわかること
- リードナーチャリングの概要と具体的な手法
- BtoC・BtoBの事例とKPIの設定と運用について
- 失敗事例とリードナーチャリングの成功のポイント
リードナーチャリングとは?
リードナーチャリング(英語:Lead Nurturing)とは、見込み客(リード)を購買意欲の高い顧客へ育成するプロセスのことです。具体的には、顧客の興味・関心度合いに合わせて適切な情報提供を行い、商品やサービスへの理解を深めてもらうことで購買行動を促すマーケティング手法を指します。
近年、営業活動とデジタルマーケティングの連携が重要視される中で、「必要な情報を、必要な相手に、適切なタイミングで届ける」ことが成果を大きく左右します。そのため、リードナーチャリングは多くの企業で導入・注目されるようになりました。
インサイドセールスにおけるリードナーチャリングとは?
インサイドセールスとは、対面での訪問営業を行わずに、オンラインや電話、メール、チャットなどを活用して見込み客にアプローチする営業手法です。現代の営業活動では、フィールドセールスとインサイドセールスを組み合わせるケースが増えています。
インサイドセールスで重要なのは、リード(見込み客)情報を一元管理し、購買意欲が高まるステージまで継続的に育成(ナーチャリング)することです。
- 資料請求後のメールフォロー
- ウェビナーやオンラインセミナーの案内
- 適切なタイミングでの電話やチャットフォロー
上記のように、フェーズに応じたコミュニケーション施策を行うことで、リードとの関係性を深め、最終的に商談獲得へつなげます。
リードナーチャリングを日本語でいうと
リードナーチャリングを直訳すると、「見込み客の育成」や「顧客育成」という意味合いになります。ビジネスシーンでは「リードの醸成」と表現されることもありますが、一般的には「リードナーチャリング」というカタカナ用語が広く浸透しています。
マーケティングにおけるリードナーチャリングの役割
マーケティング全体の流れの中で、リードナーチャリングは顧客との接点を継続的に構築・強化する重要な役割を担います。具体的には以下のようなメリットがあります。
- 営業効率の向上: 購買意欲の低い段階から情報提供を行うことで、購買意欲の高いリードを選別しやすくなる
- 顧客満足度の向上: 顧客のニーズに合った情報を提供することで、顧客体験(CX)を高める
- クロスセルやアップセルにつなげる土台づくり: 製品やサービスを検討している段階で、関連情報を適切に提供することで、追加購入や上位プランの提案を受け入れやすくする
リードナーチャリングの方法
リードナーチャリングを成功させるには、リードの購買意欲や検討度合いに応じた施策を選択し、適切なタイミングでアクションを行うことが大切です。主な方法としては以下が挙げられます。
メールマーケティング
- 見込み客の属性や行動履歴に合わせ、セグメント化したメール配信を行う
- ステップメールを活用し、段階的に情報提供・興味喚起を実施する
コンテンツマーケティング
- ブログ記事、ホワイトペーパー、導入事例など、多様なコンテンツを用意して見込み客の興味・関心に対応
- ソーシャルメディアや広告などを活用し、コンテンツを拡散して潜在顧客とつながる
マーケティングオートメーション(MA)ツールの活用
- 見込み客のWebサイト閲覧状況やメール開封率をトラッキングし、スコアリングや自動メール送信を行う
- 購買検討度合いが高まったリードを素早く営業部門へ連携(ホットリードの抽出)
関連記事:MAツールとは?一覧や比較表を駆使し簡単に解説!ツール導入後のポイントも紹介
ウェビナーやオンラインセミナーの開催
- 参加者の関心が高いテーマを設定し、登壇することで専門性や知識をアピール
- イベント後のフォローアップメールやアンケートから、意欲の高いリードを優先的にアプローチ
SNSやコミュニティを活用したエンゲージメント強化
- LinkedInやFacebookなどのSNSを通じ、セミナー情報や業界ニュースなどをシェア
- コミュニティでユーザー同士の交流を促し、ブランドへのロイヤリティを高める
リードナーチャリングのKPI設定について
リードナーチャリングの成果を正しく評価するには、KPI(重要業績評価指標)を適切に設計・運用する必要があります。代表的なKPIとしては、以下が挙げられます。
- オープン率 / クリック率
- メールマーケティングの成果を可視化
- コンテンツへの興味度合いや訴求力を測定
- リードスコアリング(スコアの平均値や上昇度合い)
- 行動データ(サイト訪問、資料ダウンロード、メールクリックなど)を数値化し、購買意欲の高いリードを特定
- MQL(Marketing Qualified Lead)数
- マーケティング活動によって創出された営業に引き渡す価値のあるリードの数
- SQL(Sales Qualified Lead)数
- 営業担当が「商談化の可能性が高い」と判断したリード数
- 商談化率 / 成約率
- リードナーチャリングによって創出したリードが、どれだけ商談や成約につながったかを測定
これらのKPIを組み合わせることで、どの施策が効果的か、どの段階でリードが離脱しているかなどを把握できます。改善すべきポイントを明確にし、施策をPDCAサイクルで回すことが重要です。
リードナーチャリングの効果測定ツールについて
リードナーチャリングを本格的に取り組む際には、MA(マーケティングオートメーション)ツールや、CRM(顧客関係管理)ツールなどを活用するのが一般的です。代表的なツールとして以下が挙げられます。
HubSpot
- 無料版から始められる点が特徴
- マーケティング、セールス、カスタマーサポート機能を統合的に管理できる
Marketo Engage
- 大企業・グローバル企業でも導入事例が豊富
- 複雑なスコアリング設定や高度なメール配信が可能
Salesforce Pardot
- Salesforce CRMとの親和性が高い
- リード管理から案件化までを一気通貫でサポート
Adobe Experience Cloud
- Web解析(Adobe Analytics)と連携しやすい
- 大規模サイトでのパーソナライズ施策が強み
これらのツールを使うことで、顧客行動を可視化し、セグメントごとの施策を自動化できます。最終的には営業効率とマーケティングROIの向上に寄与しやすくなります。
関連記事:CRMとは?簡単に解説!メリットや事例にツールの選び方まで詳しく紹介
リードナーチャリングの事例
リードナーチャリングについて更に詳しく知るために、以下よりBtoC、BtoBそれぞれの事例を紹介したいと思います。
リードナーチャリング BtoCの事例
BtoCでは、個人消費者に対して的確かつタイムリーなアプローチを行うことが、購買意欲を高めるうえで極めて重要です。
以下では、実際の事例を想定した具体的な数値を挙げながら、リードナーチャリングの方法を紹介します。
1. ECサイトでの購買データ × メール配信
- 購買データの活用例
過去3か月以内に同一カテゴリの商品を購入したユーザー5,000名を抽出し、それぞれの購買履歴に基づく「おすすめ商品リスト」をメールで配信しました。 - 結果
- メールのクリック率: 平均2.5% → 5.3% に向上
- 実際の再購入率: 配信前の2.2% → 配信後は 4.5% に上昇
- 売上増加率: 前月比で +15% を達成
- クーポン情報の段階配信
特定の顧客層(過去6か月以内に2回以上購入実績のあるユーザー1,000名)に対して、週ごとに割引率の異なるクーポンを段階的に配信し、「次回購入時に5%オフ→10%オフ→20%オフ」のように優待を拡大。
- 最終的な利用率: 10%オフクーポンの利用率は約 20%
- リピート顧客化: クーポン利用後、1カ月以内に再度購入したユーザーは約 12% にのぼり、リピート率向上に貢献
こうしたパーソナライズされたメール配信と、時期を見計らったクーポン施策を組み合わせることで、短期間でも再購入やリピート率を伸ばすことができます。
2. オンライン講座プラットフォームでの事前学習コンテンツの提供
- 無料動画コンテンツの提供
オンライン講座の受講検討者(プレ登録ユーザー)約3,000名に対して、実際の講座の一部を無料で視聴できる動画コンテンツを配信。登録後に自動配信されるステップメール内で「講座紹介動画」へ誘導しました。 - トラッキングとスコアリング
システム上で視聴時間・視聴完了率をリアルタイムに把握し、独自のスコアリング指標(「3分以上視聴なら+10ポイント」「動画を最後まで視聴なら+20ポイント」など)を設定。
- 視聴完了率: 送信者のうち約 30% が最後まで視聴
- 高スコアユーザー(視聴完了+資料ダウンロード)の発生率: 約 12%
- 申し込み促進メールの送信と効果
視聴完了率が35%以上のユーザーを「高関心層」とみなし、翌日に申し込み用の特別割引コード付きメールを送付。
- メールクリック率: 8% → 12% にアップ
- 最終的な成約率: 2.5% → 4.0% に向上
このように動画視聴データに基づくスコアリングと追加フォローメールを組み合わせることで、講座受講への関心度が高いユーザーを的確に抽出し、効率的にアプローチできるようになります。
BtoC事例における特徴
BtoCのリードナーチャリングでは、購買プロセスが短期で完結するケースが多いため、タイムリーな情報提供とクーポンなどのインセンティブが高い効果を発揮します。加えて、ユーザーの行動データ(閲覧履歴や動画視聴時間など)を分析したうえで、パーソナライズした施策を素早く打ち出すことが結果を左右します。
購買データやスコアリングを活用し、適切なタイミングで顧客の「欲しい」に合わせた訴求ができれば、高いコンバージョン率やリピート率向上につながります。
関連記事:スコアリングとは?意味や手法に分析方法などマーケティング活用のポイントを解説
リードナーチャリング BtoBの事例
BtoBの場合、商材や購買プロセスが複雑で、検討期間が長期化しやすい点が特徴です。単価が高いソリューションやシステム導入であれば、社内承認プロセスや予算取りなど、さまざまなハードルをクリアする必要があります。そのため、継続的かつ段階的なアプローチを組み合わせることが重要です。
以下では、ITソリューション企業を例に具体的な施策をご紹介します。
1. ITソリューション企業のウェビナー施策
- 定期ウェビナーの開催とテーマ設定
週1回、業界の最新技術や自社ソリューションの導入事例を紹介するウェビナーを開催。1回あたりの参加者は平均 150名。
- テーマ例: 「DX推進における自社導入事例」「最新AI技術の活用で業務効率化」 など
- テーマ例: 「DX推進における自社導入事例」「最新AI技術の活用で業務効率化」 など
- 参加者のスコアリングとフォローアップ
ウェビナー申込みフォームに入力された企業情報や、ウェビナー後のアンケート回答を基にスコアリングを実施。アンケートで「導入検討時期が3か月以内」と回答した企業には加点し、購買意欲が高いと判断。
- 高スコア企業の割合: 全体の約 20%
- フォローアップ方法: ウェビナー終了翌日に担当営業から電話や個別メールを送付
- 成果
- 商談化率(高スコア企業限定): 平均 15%
- 成約までの期間: 6~12か月ほどかかるケースが多いが、高スコア企業の約 40% が6か月以内に契約
こうした定期ウェビナーの活用により、見込み度合いの高い企業を効率的に抽出し、タイムリーな個別アプローチを行えるようになります。
2. ホワイトペーパーやケーススタディの活用
- ダウンロード数とリード情報の収集
詳細な技術資料や成功事例をまとめたホワイトペーパーを制作し、ランディングページからのダウンロードを促進。1冊あたりのダウンロード数は月間 300件。
- 主なコンテンツ:
- ソリューション概要と導入メリット
- 導入企業の実データを用いたビフォーアフターの成果(例: コスト削減率30% など)
- 導入検討時のQ&A集
- 主なコンテンツ:
- 閲覧履歴や滞在時間のトラッキング
マーケティングオートメーションツールで、ホワイトペーパーをダウンロードしたリードがその後に閲覧したWebページや滞在時間を追跡。
- 平均滞在ページ数: ダウンロードユーザーは1回の訪問で 3~5ページ を閲覧
- 滞在時間の目安: 主要製品ページを30秒以上閲覧した場合に加点
- 興味度合いの可視化とアプローチ
一定のスコア(例: 50ポイント以上)に達したリードに対して、メールで追加事例を案内。さらに購買意欲が高いと判断できる場合は、営業担当が電話やZoomミーティングを提案。
- メール開封率: 通常のステップメール(20%前後)→ ホワイトペーパーダウンロード後のメールは 35% に向上
- 商談獲得率: スコア50以上のリードの場合は平均 10~12% で商談につながる
-
BtoB事例における成功のカギ
BtoBでは、複数回の接点を通じてリードとの関係を徐々に深めることが重要です。とくに以下のポイントに注力すると、より高い成果を期待できます。
- 段階的な情報提供: 最新事例や詳細資料など、興味度合いに合わせてコンテンツのレベルを上げる。
- 課題感の深堀り: 営業担当が早期段階でリード企業の社内事情を把握し、本質的な課題に合ったソリューションを提示する。
- 継続的なフォローアップ: 長期検討が前提のため、ウェビナーやホワイトペーパーなど、複数のタッチポイントでリードとの関係を維持する。
このように、リードと複数回のやり取りを重ねながら、担当者の課題を深く理解し、適切なソリューションを示すことこそがBtoBリードナーチャリングの成功を左右します。
検討期間が長いため、じっくりと育成しながら購買意欲を高めていくプロセスが不可欠となるのです。
リードナーチャリングの失敗事例
成功事例よりも失敗事例からの方が学びが多いこともあります。続いて、よくある失敗例を紹介します。
セールスとマーケティングの連携不足
- ホットリードを素早く営業に引き渡せず、商機を逃してしまう
- 連携体制が不十分なため、見込み客情報の共有が滞る
コンテンツ不足による育成の停滞
- リードの興味・関心に合ったコンテンツが用意されていない
- 興味を引く情報が不足し、フォローを続けられなくなる
KPIを定めず、施策の効果を検証しない
- PDCAを回せず、成果が出ているのか否かが不明確
- 施策を継続してしまい、コストだけがかさんでしまう
ツールの導入だけで終わってしまう
- MAツールを導入したが、運用体制が整わず放置される
- 使いこなせず、現場で活用されずに形骸化する
これらを防ぐためには、社内のコミュニケーション強化やコンテンツ施策の継続、KPIを根拠とした改善活動が欠かせません。
リードナーチャリングを成功させるポイント
リードナーチャリングを成功させるためには、以下のポイントを押さえておくと効果的です。
マーケティングと営業部門の連携強化
- 共有の目標設定(MQL数やSQL数の目標)を行い、情報をリアルタイムに交換
- 定期ミーティングや進捗共有ツールを活用し、連携を密にする
顧客視点に立ったコンテンツ設計
- ペルソナやカスタマージャーニーを明確にし、興味関心に応じたコンテンツを用意
- セルフサービスで情報を得られるように、情報アーカイブやFAQページを充実させる
KPIモニタリングとPDCAサイクルの徹底
- オープン率、クリック率、商談化率などを定期的に確認
- 低い数値が発生している箇所があれば原因を分析し、施策を改善
マーケティングオートメーションの適切な活用
- ツールを活用して、シナリオ設計・スコアリングの自動化を行う
- 無理に複雑なシナリオを組まず、まずは段階的に運用をスタート
スモールスタートと継続的な拡張
- いきなり全フェーズを網羅しようとせず、まずは重要度の高い部分から着手
- 成果が見えたら、ほかの施策や新たなチャネルへ拡張する
成功させるためのポイント
リードナーチャリングを成功させるためには、マーケティングと営業の連携を強化し、顧客視点に立ったコンテンツを用意することが大前提となります。そのうえで、KPIをもとにした定期的なモニタリングとPDCAサイクルの実践が欠かせません。
具体的には、オープン率やクリック率といった数値を継続的に追いかけ、改善施策を回し続けることで、狙いどおりの成果に近づけます。また、マーケティングオートメーションの適切な活用によって、ステップメールやスコアリングなどのプロセスを自動化しながら、無理なくリードを育成できる環境を整えることが可能です。
さらに、スモールスタートで一部の施策から着手し、効果が得られたら他の施策やチャネルに拡張していくアプローチをとることで、リードナーチャリングの導入リスクを抑えながら、段階的に運用ノウハウを蓄積できます。
これらの要素を総合的に押さえることで、持続可能かつ実効性の高いリードナーチャリングを実現できるでしょう。
総括
リードナーチャリングは、現代の営業・マーケティング活動において不可欠な手法となっています。競合が激化する中で、単にリードを獲得するだけでは成果につながらず、その後の育成プロセスこそが売上拡大のカギと言えるでしょう。
本記事で紹介した概要、手法、KPI設定、効果測定ツール、事例、失敗要因、成功のポイントなどを総合的に押さえ、継続的なPDCAサイクルを回すことで、リードの育成を効率化し、確度の高い商談創出につなげられます。
ぜひ自社の状況に合わせて、リードナーチャリングの仕組みを構築・運用してみてください。