Cookieとは / Cookie規制の歴史と影響
今回は巷で話題のCookieレス問題を通してその原因に迫っていきます。
『リタゲ・リマケが回らない。。』
みなさん最近、そんな感覚になったり、実際に数値としてリタゲの表示回数が下がったりといったこと起きていませんか?
これは正しく広告運用されている代理店や広告主の方なら必ず起きているはずです。
”必ず”と断言する理由について、今回は巷で話題のCookieレス問題を通してその原因に迫っていきます。
早速ですがまずはCookieとはなんたるや、ということから整理していきましょう。
Cookieとは
みなさんは一度訪問したSNSサイトやECサイトなどに再度IDとパスワードを入力することなく、ログインすることができた経験をお持ちでないでしょうか?
きっとすべてのインターネット利用者がこの経験をしたことがあるかと思います。
毎回IDとパスワードを求められずに同じサイトに入ることができるこの機能がCookieを使うことによる一番のメリットであり、CookieがないとAmazonもFacebookも毎回(正確には一度ログインした後でもページを遷移するたびに)IDとパスワードを入力する必要がでてきます。
Cookieがあることによって快適なインターネット体験が可能になっているんですね。
Cookieの仕組み
CookieはChromeやSafariなどの”Webブラウザ”に書き込まれるユーザーを識別する一意の情報です。
例えるならCookieは、手荷物預かり所で手荷物と引き換えに渡される”引換券”のようなものです。引換券は利用者毎に重複がないので、手荷物預かり所に戻ったときに確実に自分の手荷物と交換することができます。
つまり、一度訪問したWebサイトに再度訪問するときに、ブラウザはこの引換券(Cookie)をWebサイトに渡し、手荷物(ログイン情報)を受け取ります。
ブラウザはこの受け渡しを自動的におこないますのでユーザーは意識することなく再訪サイトにログイン情報を入力することなく入ることができるのです。
Cookieのその他の機能
Cookieはユーザーを識別する情報以外にも多くのデータを持たせる(書き込む)ことができます。
例えば、ECサイトで買い物かごの中に残っている商品の情報(カゴ落ち)などがそれに当たります。
これによりユーザーはその時は買わなかった商品を再度探すことなく、購入することができます。
Cookieをもう少し詳しく
これまでみてきたように、Cookieはインターネットに欠かすことができないとても重要な役割を果たしてきました。
そんなCookieが今なぜ悪者のように叩かれているのでしょうか。
それを理解するためには、もう少しだけ詳しくCookieを理解する必要があります。
Cookieが悪者扱いされる理由、3rdPartyCookieについて見ていきましょう。
3rdPartyCookieとは
Cookieには2つの種類があります。
1つは今まで見てきた1stPartyCookieと言われる、インターネットブラウジングをとても快適にするCookie。
もう1つが3rdPartyCookieと言われる種類のCookieです。
1stPartyCookieと3rdPartyCookieの違いは①Cookieの発行元の違いと②Cookieの利用目的の違いにあります。
①Cookieの発行元
1stPartyCookieはユーザーが訪問しているWebサイトが発行する引換券です。
3rdPartyCookieはユーザーが訪問しているWebサイト以外から発行された引換券です。
サイトを訪問しているユーザーはこれまで意図せずに第三者からCookieを発行されていました。このことが問題になった背景は次の章で詳しく記載します。
②Cookieの利用目的
1stPartyCookieは主にログインやカゴ落ちなどウェブサイトを利用するユーザーの利便性を向上させるために利用されています。
一方、3rdPartyCookieは主にインターネット広告(リターゲティングやアフェリエイトなど)がメインの利用目的です。インターネット広告業界はこの3rdPartyCookieを軸に成長してきましたので、インターネット広告にとって非常に重要な機能でもあります。
1stParty Cookie
3rdParty Cookie
発行元
ユーザーが訪れたWEBサイトのサーバー
ユーザーが訪れたサイトではない広告媒体などのサーバー
使用目的
訪れたサイト内のログインやカートに入れた商品等の情報の保管
広告計測(CVやクリック等)や行動ターゲティング等、複数サイト間におけるユーザー別の行動を識別
Cookieが規制される背景
Cookie規制における大きな登場人物は2人です。
1人目がGDPR(EU一般データ保護規則)
GDPRは2012年に欧州連合で初めて公開され、2016年に正式に制定された、EU内での個人データ保護を強化することを目的とした規則です。歴史としては浅く、2018年5月に漸くEU各国に適用されています。
GDPRでは、すべての個人情報の取得には同意が必要であり、3rdPartyCookieもGDPRの定義では個人情報にあたるため、Cookieを取得する際に同意を取ることが義務化されました。
まぁ勝手に情報を抜き取られていたのは気持ち悪いのでこの流れは順当かもしれませんね。
これによりCookie取得率が半分や最大10%まで落ち込んだというデータも散見されます。
ともあれ、ここから世界は高速で変化していきます。
登場人物2人目Apple
AppleはGDPRに呼応する形で、独自のITPという技術により2017年を皮切りにCookie規制を進めていきました。ITPとはIntelligent Tracking Preventionで、文字通り追跡を防止するための仕組みです。
Appleとしては、これに乗り出した理由は大きく3つあるのかなと思っています。(感想)
①GDPRによるプライバシー保護に準拠するため
②Appleユーザーのユーザー体験を守るため
③(他のGAFAに対する攻撃)
いずれにせよ、これによりApple製品はiPhone(safariブラウザ)を中心に3rdPartyCookieの取得が完全に不可能になりました。
FacebookはこれによりAppleに対して独占禁止法で裁判を起こすなんて話題もありましたが、これは後ほど記載しますが、Facebookのビジネスモデルの根底を揺るがす大問題だからであり当然だといえますね。(Facebookは全てを諦めるようにメタバースに参入したようですが)
上記の2つの登場人物により、3rdPartyCookieは大幅に規制されることになりました。
これまで「インターネット広告の血液」とも言われていた3rdPartyCookieの機能不全によりインターネット広告業界は路頭に迷いはじめ出している訳ですが、あらためてCookieレスのインターネット広告への影響を次の章でみていきましょう。
〈法規制の歴史〉
〈デバイスによる規制(ITP)の歴史〉
※GoogleもChromeにおける3rdParty Cookieのサポートを2023年半ばから後半までの3か月間で段階的に廃止する見込みであることを発表しております。
Cookie規制の影響
3rdParty Cookieが規制される事により及ぶ影響の範囲について最後に解説していきます。
まず、直接的な影響としては2点。
①コンバージョンが適切に計測出来なくなる
広告コンバージョンの計測はこれまで3rdPartyCookie(一部1stPartyCookieも含む)を使って計測されてきました。
しかし、iPhoneやGDPRを中心にそれが規制されることによりリスティングやディスプレイ広告から経由してサイトでコンバージョンに至ったユーザーの識別が困難になり(識別子であるCookieがないので)、コンバージョンとしてカウントすることができなくなります。
また、広告のオーディエンス最適化は過去のコンバージョンデータを基に親和性の高いオーディエンスへ広告媒体が自動的に配信することで最適化されます。Cookieレスの場合、コンバージョンの計測ができなくなるので広告の自動最適化が機能しにくくなる事を意味します。
②リターゲティング広告 / リマーケティング広告が回らない
3rdPartyCookieを発行する広告のタグが機能しないので、一度とあるLPに訪問しコンバージョンまで至らなかったユーザーを追客する、いわゆるリタゲ/リマケが機能しなくなり(広告ネットワークで他のサイトに訪れた際にターゲティング広告が表示されない状況)、見込みユーザーの刈り取りが難しくなります。
つまり、この影響で広告の表示回数が減少し広告代理店目線では、広告予算の消化が出来なくなったり、それに伴い入札単価をあげることによりコンバージョン単価が上がってしまうというような問題が発生します。
その証拠ではありませんが、Facebookオーディエンスネットワーク上でのCookieによるトラッキングができなくなり、Facebook目線で言うと表示回数が極端に減少してしまい売上が下図のように減少してしまいました。
Facebookのビジネスモデルを鑑みると、強烈な打撃を受けていることがわかりますね。
この余波は大なり小なり広告代理店を直撃しますので、今から対策することは自社の売上を守る意味でも、クライアントへの価値提供の意味でも重要な課題になりそうです。
まとめ
Cookie規制はインターネット広告業界に身をおかれる方や実際に広告を出稿している広告主の方は皆様、肌感覚として課題を持たれていたかと思いますが、今回はCookieというグラスを通して、それを改めて整理し、問題が発生している原因まで迫ってみました。
現状ではCookieレスに対するクリティカルな解決策は市場に出て来ていないです。(Facebookはメタバースに業態転換し、GoogleはTopicというDMPのような代替案しかだせていません)
しかし、Cookieを使わずに 1stPartyデータを活用することで、広告効果を向上させた事例が最近になり注目されるようになりました。1stPartyデータを活用した広告配信手法の効果とその課題もまとめさせていただいておりますので、是非お目通しください。
最後までお読みいただきありがとうございました!